ビジネス文書で失敗しない!訂正印の押し方と注意点

契約書を含む重要な文書を一部訂正する際には、「訂正印」の押印が必要です。訂正印を適切に押印することで、文書を修正した人物が明確になり、改ざんのリスクを防止できます。

訂正印の押し方には一定の慣習的なルールがあります。誤った方法で修正してしまうと、かえってわかりにくい書類となったり、文書の信頼性が低下したりする恐れがあるため要注意です。

本記事では、訂正印の正しい押し方やNG例、印象を良くするコツなどを解説します。正しく理解しておくことで、円滑な書類作成や取引先からの信頼感アップが期待できるでしょう。

関連記事:訂正印とは?正しい押し方・使い方を徹底解説!

訂正印とは?意味と役割をおさらい

訂正印とは、文書の記載事項を一部修正する際に用いる印鑑を指します。契約書や申請書、ビジネス文書など、重要性の高い書類の修正で利用するのが一般的です。

具体的には、以下のような場面では訂正印を使用します。

  • 漢字や数字などの誤記を修正するとき
  • 抜けていた文字を加筆するとき
  • 不要な文字を削除したいとき
  • 氏名などの記載ミスを直すとき

少しの記入ミスで最初からすべての文章を書き直すのは手間がかかります。訂正印の押印により、記述者が自らの意思で書類を修正したと示すことが可能です。契約日や契約内容といった文書改ざんのリスクを防止でき、信頼性の高い書面を作成できます。

訂正印は会社実印のような公的機関への届出は不要であり、一般的な認印を使用して問題ありません。訂正印用の印鑑もありますが、契約書を含む法的効力がある文書では、書面の印鑑と同じもので修正するのが望ましいとされています。

なお、訂正印の押し方や修正方法は、法律に明記されているわけではありません。トラブルを防止するために、ビジネスの慣習上定められています。

訂正印の基本的な押し方と訂正方法

訂正印を押す代表的なタイミングは以下の4つです。以下では、それぞれの場面における基本的な押し方や修正方法を解説します。

  • 誤字を修正する
  • 文字を追加する
  • 文字を削除する
  • 数字を訂正する

誤字を修正する場合

住所や氏名などの記述を誤った際には、以下の流れで文書を修正します。

  1. 誤った文字に二重線を引く
  2. 削除した文字の上部(横書きの場合)に正しい文字を記載する
  3. 二重線の上またはその近くに訂正印を押す
  4. 「削除〇文字、加入〇文字」と記載する

基本的に縦書き・横書きにかかわらず、大まかな手順は変わりません。ただし、文字を記述する場所の優先順位は以下のように変わります。

表記方向文字の記述場所の優先順位
横書き1. 右
2. 左
3. 上
4. 下
縦書き1. 上
2. 下
3. 右
4. 左

また、誤った文字だけでなく、語句単位で削除・修正するのが大切です。たとえば、「渋谷区」を「渋谷市」と誤った場合、「市」だけではなく「渋谷市」のすべてを「渋谷区」に修正します。

文字を追加する場合

必要な文字が文中から抜けてしまった際には、以下の流れで修正します。

  1. 文字を追加する場所(文字間の上部)に「v(横書きの場合)」を記載する
  2. 「v」の上部に文字を追加する
  3. 追加した文字の横に訂正印を押す
  4. 訂正印の横に「〇字追加」と記載する

たとえば、「東京都渋谷区」を「東京渋谷区」と誤った場合、「京」と「渋」の間の上部に「v」を記載して、「都」を挿入します。文章の上部に余白がなければ、文章の下部でも問題ありません。

なお、文章が縦書きの場合は、「v」ではなく「<」を用います。

文字を削除する場合

誤って記載してしまった文字を削除する流れは、以下のとおりです。

  1. 削除する文字に二重線を引く
  2. 二重線の上部に訂正印を押す
  3. 訂正印の横に「〇字削除」と記載する

たとえば、「東京都渋谷区」を「東京都都渋谷区」と誤った際には、「都」の1字について上記の措置を行います。

数字を訂正する場合

金額や見積書の数量といった数字を誤った際は、以下の流れで修正します。

  1. 修正する文字に二重線を引く
  2. 二重線の上部に正しい数字を記載する
  3. 正しい数字の横に訂正印を押す
  4. 「削除〇文字、加入〇文字」と記載する

数字単体ではなく、全体を修正するのがポイントです。たとえば、「2025年」と書くべきところを「2024年」と誤った際は、「4」だけでなく「2024年」全体を削除します。

また、文字数は「¥」や「,」、「-」なども1文字としてカウントしましょう。たとえば、「¥200,000-」を「¥2,000,000-」と修正したケースでは、「削除9文字、追加11文字」となります。

書類の種類別|訂正印の押し方と注意点

修正する書類によって、訂正印の押し方や注意点が異なります。特に以下の3つは事前に確認しましょう。

  • 【契約書】両者の訂正印が必要
  • 【申請書・届出書】訂正の都度印鑑
  • 【社内文書・メモ】訂正印不要な場合もある(ルールに従う)

【契約書】両者の訂正印が必要

契約書を修正する際には、押印した両者の訂正印が必要です。一人の訂正印しか押されていないと、一方が勝手に修正したという誤解を生む可能性があるため要注意です。訂正内容については、記載事項が多い場合、欄外に明記する対応もあります。

加えて、相手方が訂正時に使用できるように、前もって書面の余白部分に押印する「捨印」を用いる方法もあります。捨印を用いる場合は、修正内容を捨印の横に記載しましょう。捨印で対応できる範囲については、事前に両者間で取り決めを行うのが一般的です。

なお、電子契約では誰でも簡単に押印できる電子印鑑を用いるため、訂正印での修正はできません。訂正印を使えるのは、あくまで書面での契約に限られます。

【申請書・届出書】訂正の都度印鑑

公的機関に提出する申請書や届出書を訂正する際には、誤った箇所ごとに訂正印を押す必要があります。たとえば、氏名や日付、住所をそれぞれ間違って記入した場合は、3箇所それぞれに訂正印を押します。まとめて最後に一度だけ押すなどでは、再提出を求められる可能性があるため注意しましょう。

また、近年は申請書への押印を求めず、訂正も二重線と署名だけで対応できるケースが少なくありません。訂正印も有効ですが、訂正箇所に加えて、申請者欄にも押印を求められる可能性があります。公的機関への申請書・届出書の訂正方法に悩んだら、まずは職員に直接問い合わせましょう。修正が難しい、不明な点が多いなど、場合によっては新しい書面での再提出を検討してください。

【社内文書・メモ】訂正印不要な場合もある(ルールに従う)

社内文書やメモなど、正式性の低い書類では、訂正印が不要なケースがあります。組織内部の文書やメモの修正方法は、以下のように多岐にわたります。

  • 押印は必要だが訂正文字数の記載は不要
  • 押印は不要だが修正箇所に氏名を記載する
  • 修正日を記載するだけで問題ない

書類の修正方法は法的に明確な定めがなく、各組織で異なるため、それぞれのルールに従って柔軟に対応しましょう。

訂正印のNGな使い方とやってはいけない例

訂正印のNGな使い方とやってはいけない例は、以下のとおりです。これらを把握しないと、文書が無効になったり、提出先からの信頼を損なったりする恐れがあります。以下では、それぞれの例を詳しく解説します。

  • 修正液・修正テープの使用はNG
  • 訂正箇所に印影がかからず押すのは無効になる恐れ
  • 複数箇所の訂正で印を省略するのはNG
  • シャチハタなどの簡易印は基本的に不可

修正液・修正テープの使用はNG

正式な文書を訂正する場合、修正液や修正テープの使用は厳禁です。

修正液や修正テープを用いると、修正前の内容がわからなくなります。不正を疑われる原因となり、書類の信頼性が担保されなくなるため、必ず訂正印を使用しましょう。

訂正箇所に印影がかからず押すのは無効になる恐れ

文書を訂正する際に、訂正箇所に印影がかかっていないと、修正内容が無効になる恐れがあります。事前に業界や企業の慣習を確認し、適切な位置に押印しましょう。

とはいえ、訂正箇所の上部や横への押印で認められるケースも多くあります。訂正印の押し方は、法律ではなくビジネスの慣習によって成り立っているため、柔軟に対応しましょう。

ただし、訂正印が欄外に押されていると、すぐに訂正者が確認できず、やり方によっては他の箇所もまとめて訂正できてしまいます。文書の信頼性にもかかわるため、基本的には訂正箇所にかかるように、または上部や横に押印しましょう。

複数箇所の訂正で印を省略するのはNG

複数箇所を訂正する際は、必ず訂正箇所ごとに訂正印を押印しましょう。余白にひとつの訂正印を押印し、すべての修正を完結させることは認められません。それぞれの訂正が無効とみなされる恐れがあります。

申請書や届出書の場合は再提出を求められ、契約書の場合は取引先の信用が損なわれる可能性があります。

シャチハタなどの簡易印は基本的に不可

公的な書類を訂正する場合、シャチハタなどの簡易印は基本的に認められません。シャチハタはゴム印が使われており、時間の経過とともに劣化しやすいためです。

また、契約書などの法的効力がある文書は、書面に押印した印鑑と同じもので訂正するのが望ましいとされています。別の印鑑を使うと、訂正した人が判別できなくなるため、シャチハタではなく当初押印した印鑑で修正しましょう。

ただし、社内文書などであれば、社内の規定や慣習に従ってシャチハタでも認められる場合があります。文書の種類や状況に応じて、印鑑を使い分けると効率的でしょう。

訂正印を使うときのマナーと印象を良くするコツ

訂正印を用いる際には、取引先や提出先からどのように見られているかを意識しましょう。特に以下の3つのマナー・コツを意識することで、取引先や提出先からの印象が良くなります。以下では、それぞれのマナー・コツを詳しく解説します。

  • 修正内容を見やすく整える
  • 可能であれば提出前に再記入・再出力を行う
  • 同じ訂正が複数箇所ある場合は統一感を意識する

修正内容を見やすく整える

訂正印で文書を修正する際は、修正内容を見やすく整えることが重要です。前提として、誤字であれば単語単位で修正するなど、基本的なルールをしっかりと守りましょう。

また、字を丁寧に記載し、印影を鮮明に残すことで、訂正内容や訂正者が明確になり、見やすい文書になります。加えて、同じ箇所を何度も訂正せず、一度の訂正で正確に修正を終えることも重要です。

修正内容が見やすければ、丁寧な仕事をしている印象を与えられ、取引先や提出先からの信頼を得られるでしょう。

可能であれば提出前に再記入・再出力を行う

手間や作成手順を考慮して可能であれば、提出前に再記入・再出力を行いましょう。

訂正印が押されていると、どれだけ丁寧に修正しても読み手は気になってしまいます。取引先によっては「改めて作成・出力する丁寧さがない」という印象を与えてしまうかもしれません。特に、訂正箇所が多い場合には注意が必要です。

文書を作成する工程上、再記入・再出力ができない場合は仕方ありません。しかし、訂正がない見やすく綺麗な文書を提出することで、仕事の丁寧さや誠実さを伝えられ、好印象を与えられるでしょう。

同じ訂正が複数箇所ある場合は統一感を意識する

同じ訂正が複数箇所存在する場合は、統一感を意識しましょう。

具体的には、訂正箇所はすべて同じ方法で二重線を引き、同じ位置に訂正印を押すなどが挙げられます。他にも、「株式会社○○」と「(株)〇〇」のような表記ゆれにも注意が必要です。

統一感を意識して訂正することで、書類全体の信頼性が保たれ、後から見返した際にも訂正内容や訂正箇所がわかりやすくなります。取引先とのトラブルを防止でき、丁寧に仕事をしているという印象も与えられるでしょう。

修正が多い書類は信頼性が下がる可能性も

修正があまりに多い書類を取引先に提出すると、以下のような印象を与える可能性があります。

  • 書類が見にくい
  • 仕事が丁寧でない企業である
  • ミスが多く確認不足が多い
  • 本当に正しい内容であるかどうか懸念を抱く

結果として、取引先からの信頼を損なう可能性があり、公的機関に提出する書類では再提出を求められる恐れがあります。

前提として、訂正箇所がない書類を目指し、修正が多い場合は改めて作り直すのがおすすめです。若干の手間にはなりますが、取引先と良好な関係性を築くことができ、取引の長期化につながるでしょう。

まとめ

書類や文書の誤りを修正する際には、「訂正印」を使用しましょう。訂正印を用いて適切に書類を修正することで、誰が修正したかが明確になり、文書改ざんのリスクを防止できます。

訂正印の押し方にはビジネスの慣習上のルールがあり、誤ってしまうと無効な文書とみなされる可能性があります。正しい押し方を把握し、有効かつ見やすい書類を作成しましょう。

ただし、過剰に修正が多い書類は、取引先や提出先からの信頼を損なう恐れがあります。可能であれば、書類を再発行して誠実な姿勢を示すことで、取引先からの印象が良くなり、円滑なビジネスにつながるでしょう。

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