最近では、人気商品や限定アイテムを購入して転売する行為が広く見られるようになりました。しかし、「転売は違法なのでは?」と疑問や不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、転売行為そのものがすべて違法というわけではありません。ただし、転売する商品によっては各種法律に抵触し、違法となる可能性があります。これから転売に挑戦したい方は、関連する法律を適切に把握し、規則を遵守して取り組むことが重要です。
本記事では、転売の適法性や違法になる可能性がある取引、合法的に転売を行うために押さえるべきポイントなどを解説します。
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転売は違法なのか?基本を押さえよう
原則として、転売という行為自体は違法ではありません。
そもそも転売とは、「自分で購入した商品を他人に販売すること」を指します。たとえば、不要になった家電商品を売却することも転売にあたります。また、「安く仕入れて高く売る」というビジネスの基本も一種の転売であり、個人・法人を問わず広く行われている行為といえるでしょう。
ただし、法律や規制に違反した転売は違法になる可能性があります。特に、以下の2つのケースには注意が必要です。
- 法律で規制されている商品を転売する(コンサートチケット/コピー品など)
- 販売に必要な許認可を取得せずに転売を行う(古物商許可など)
これから転売に挑戦する方は、販売する商品が法律で規制されていないかを必ず確認しましょう。
違法となる可能性がある転売の具体例
以下のような形で転売を行うと、違法となる可能性があります。以下では、それぞれの具体例を詳しく解説します。
- チケット転売
- マスク・消毒液などの転売
- 偽物・コピー品の販売
- 古物営業許可が必要な場合
チケット転売
チケットの転売行為は、「チケット不正転売禁止法」に抵触し、違法となる可能性があります。
チケット不正転売禁止法とは、コンサートやスポーツイベントなどのチケットの高額転売を禁止する法律です。具体的には、業として興行主の同意を得ずに、定価を超える価格でチケットを販売する行為が違法となります。加えて、不正転売を目的としてチケットを譲り受ける行為も違法です。
チケット不正転売禁止法に違反すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。たとえ個人であっても、「反復継続の意思」を持って、「販売価格を超える価格」でチケットを転売した場合は、罰則の対象となります。
一方、反復継続の意思がなく、販売価格を超えずに転売する場合は違法になりません。具体的には、以下のような場合は適法な取引となります。
- やむを得ない事情があり公式リセールを用いてチケットを転売した
- SNSなどを用いて、友人・知人に定価以下で譲渡した
参考:e-Gov 法令検索 特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律
マスク・消毒液などの転売
2020年には、マスクや消毒液の転売が禁止になった事例がありました。
背景として、新型コロナウイルスの流行により、マスクや消毒液が不足したことが挙げられます。通常は規制対象ではない商品ですが、「国民生活安定緊急措置法」に基づいて転売への制限が科されました。
国民生活安定緊急措置法とは、国民生活と関連性が高い物資の価格や需要を調整する緊急措置を定めるための法律です。特定の物資について、指定された価格以上の価格で販売できない、または販売自体を制限するなどの規制を設けることができます。2020年当時は、事業者・個人にかかわらず、購入価格を超える価格で転売する行為が禁止されていました。
このように、社会的影響が考慮され、特定商品の転売が禁止されるケースがあります。なお、マスクと消毒液の転売制限は、2020年8月に解除されました。
偽物・コピー品の販売
偽物やコピー品を販売する行為は、違法となる可能性があります。抵触する可能性がある主な法律は、以下の通りです。
- 商標法違反
- 著作権法違反
- 不正競争防止法違反
たとえば、ブランド名やロゴが入った商品を販売した場合は、商標権侵害に問われる可能性があります。他にも、偽物のキャラクターグッズや海賊版のDVDなどを転売すると、著作権侵害にあたる恐れがあるでしょう。
さらに、本物の商品と消費者を騙して転売を行うと、詐欺罪にあたる可能性があります。悪質な取引は刑事罰の対象となるため要注意です。
ただし、コピー品とは知らずに本物と確信して販売してしまった場合は、原則として刑事罰の対象にはなりません。ただし、民事上の責任を負う恐れがあるため、気付いた時点で迅速に対応することが重要です。
古物営業許可が必要な場合
中古品(古物)の転売を業として行う場合は、「古物商許可」の取得が必要です。
古物商許可は、盗品などの不正な売買を防止し、速やかに発見するために、古物営業法で取得が義務づけられている許可です。古物商許可を取得せずに中古品の転売を業として行うと、古物営業法違反に抵触します。3年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは両方を科される恐れがあるため、必ず許可を取得しましょう。
なお、古物商許可は、あくまで業として中古品の転売を行う場合に必要な許可です。ここでいう転売とは、仕入れと販売の両方を行う行為を指します。そのため、以下のようなケースにおいては、古物商許可を取得せずに中古品を販売しても違法にはなりません。
- 新品(一度も消費者の手に渡っていないもの)を仕入れて転売する
- 自宅で使っていた家電などを売却する
- 他者から譲り受けた中古品を販売する
合法的に転売を行うために押さえておくべきポイント
合法的に転売を行うためにも以下の3つのポイントを遵守しましょう。以下では、それぞれのポイントを詳しく解説します。
- 古物商許可の取得
- 販売対象商品の確認
- 適正な価格設定と表示
古物商許可の取得
先述したとおり、中古品の転売を業として行う場合は、古物商許可の取得が必要です。古物商許可の取得は個人・法人にかかわらず可能です。
申請先は主たる営業所(自宅など)を管轄している警察署であり、以下の書類を提出することで手続きを行います。
許可申請の形態 | 提出書類 |
個人許可申請の場合 | ・許可申請書 ・略歴書(本人と営業所の管理者のもの) ・本籍が記載された住民票の写し(本人と営業所の管理者のもの) ・誓約書(本人と営業所の管理者のもの) ・身分証明書(本人と営業所の管理者のもの) ・URLの使用権限があることを疎明する資料(ECサイトなどで古物を販売する場合) |
法人許可申請の場合 | ・許可申請書 ・法人の定款 ・法人の登記事項証明書 ・略歴書(役員全員と営業所の管理者のもの) ・本籍が記載された住民票の写し(役員全員と営業所の管理者のもの) ・誓約書(役員全員と営業所の管理者のもの) ・身分証明書(役員全員と営業所の管理者のもの) ・URLの使用権限があることを証明する資料(ECサイトなどで古物を販売する場合) |
加えて、手数料として19,000円の支払いが必要です。
なお、古物商許可を得るためには、古物商を営む営業所を確保する必要があります。自宅を営業所にすることは理論上可能ですが、事業での利用が認められている物件でなければなりません。自己所有物件の場合は管理規約、賃貸物件の場合は賃貸借契約書の内容を確認しましょう。
事業での利用が禁止されている場合、管理組合からの同意や賃貸物件の使用承諾書の取得が求められる可能性があります。管理規約や契約内容を偽って許可を得ると、後々のトラブルにつながる恐れがあるため要注意です。
参考:古物商許可申請 警視庁
販売対象商品の確認
転売を行う際は、販売対象商品が規制対象ではないか、許認可の取得が不要であるかを確認しましょう。具体的には、先述した例以外にも、以下のような商品は転売が禁止、または許認可の取得が必要です。
- 酒類(酒類販売業免許の取得が必要)
- 医薬品(薬機法に基づく許可の取得が必要)
- タバコ(小売販売許可の取得が必要)
- 法律に違反した商品の転売(指定薬物など)
特に医薬品については、医薬部外品や化粧品との違いを適切に認識する必要があり、出品時の表現にも注意が必要です。薬機法に関する知識がない場合、取り扱いを避けるのが無難でしょう。
また、各販売プラットフォームで特定商品の取り扱いを禁止しているケースも少なくありません。たとえば、フリーマーケットアプリ「メルカリ」では、以下のような商品の出品が禁止されています。
- 無在庫商品
- 偽物・正規品とは確証のないもの
- 医薬品・医療機器
- 小分けした化粧品類
- サービスや権利など実体のないもの
- 電子データ
- 農薬・肥料
- 不正な経路で入手した商品
なかには、法令では取引が制限されていない商品も存在します。サービスの利用規約に違反すると、アカウントが凍結されるリスクが生じるため注意しましょう。
適正な価格設定と表示
転売で商品を出品する際は、適正な価格設定を行い、表示することが大切です。過剰に高額な価格設定だと顧客からの信頼が低下し、転売全体の印象も損なわれる恐れがあります。
また、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)にも注意が必要です。不当景品類及び不当表示防止法は、商品に関する不当な表示を禁止し、消費者を保護する目的の法律です。
出品者は商品の説明について、誤解を招く表現や過剰な煽り広告を避ける必要があります。たとえば、以下のような表示は不当景品類及び不当表示防止法違反にあたる可能性があるため要注意です。
- 実際のものや事実とは相違して著しく優良であると誤解させる表記(優良誤認表示)
- 価格を著しく安く見せかけるなど、取引条件を有利に見せる表示(有利誤認表示)
- その他、誤認される恐れがある表記(商品の原産国の偽りなど)
不当景品類及び不当表示防止法に違反すると、消費者庁による調査が実施され、誤認される表示の排除といった措置命令が下されます。さらに、課徴金の納付が命じられる可能性もあるため、商品の出品時は不当な表示を避けることが重要です。
転売に関する最新の規制・社会動向
昨今は転売に対する風当たりが強くなっています。先述したとおり、転売自体は適法ですが、以下のような行為を行う方の影響により、マイナスのイメージが強いのが現状です。
- 数量限定の商品を買い占め、本当に商品が欲しい人が購入できない
- 定価から著しく高額な価格で商品を出品する
このような背景があり、各企業や小売店は転売対策を強化している傾向があります。具体的には、「商品の予約条件を厳しくする」や「目の前で商品を開封する」などです。
社会的に転売が問題視されていることから、チケット以外にも規制対象が広がる可能性があるでしょう。自身のビジネスの信用を下げないだけでなく、社会的なマナーとして高額転売や商品の買い占めは避けることが大切です。
まとめ
自身で購入した商品を販売する「転売」には、原則として違法性はありません。しかし、法律で規制されている商品を販売したり、必要な許認可を取得しなかったりすると、違法になる可能性があります。
安全に転売ビジネスを行うためには、規制対象ではない商品であるかを確認し、適切に許認可を取得することが重要です。特に、古物商許可の取得や医薬品の販売についてはトラブルが起きやすいため注意しましょう。
また、違法でなくても商品の買い占めや著しく高額での販売は避けるべきです。転売への風当たりが強い昨今だからこそ、マナーや信頼を守ってビジネスに取り組みましょう。
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