「バーチャルオフィスは信用されない?」と不安を覚える方は少なくありません。実際に、事業所の実態がつかみにくいなどの理由から、サービスの仕組みを理解していない方に誤解されている例があります。
しかし、バーチャルオフィスは信頼性の高い大手企業や士業にも活用されています。真摯にビジネスに取り組み、対外的な印象や評判に配慮すれば、十分に信用は得られるでしょう。
本記事では、バーチャルオフィスの「信用」に関する実情や、信用を高める対策などを解説します。バーチャルオフィスを有効活用すれば、コストカットを実現しつつ一等地の住所を事業の拠点にできるため、ぜひ参考にしてください。
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バーチャルオフィス=信用されないと言われる理由
バーチャルオフィスは信用されないというイメージを持つ方は少なくありません。このように考えられる理由は、大きく以下の3つです。以下では、それぞれの理由について詳しく解説します。
- 実態がつかみにくく「架空の会社」と誤解されやすい
- 詐欺業者などの悪用事例が一部に存在する
- オフィス機能が最小限のため「簡易的」な印象を与えやすい
実態がつかみにくく「架空の会社」と誤解されやすい
バーチャルオフィスは物理的なオフィスを持たず、事業用の住所のみを貸し出すサービスです。その特性から、事業の実態をつかみにくく、「架空の会社」と誤解されることがあります。
たとえば、実際に所在地を訪問しても、基本的に企業の担当者とは対面できません。また、ストリートビューで住所を検索しても、企業の看板はなく、雑居ビルや無人フロアの写真が表示されることがあります。
取引先にバーチャルオフィスに関する知識がない場合、「本当に実在する会社なのか」と懸念を持たれる可能性があります。そのため、バーチャルオフィスを用いている旨を事前に伝えるなどの対策が必要です。
詐欺業者などの悪用事例が一部に存在する
バーチャルオフィスは、身元を隠して書類上の会社を立ち上げやすい特性があります。それゆえ、詐欺やマネー・ローンダリングといった違法行為の拠点となる事例が一部に存在します。取引先が「バーチャルオフィスは犯罪に利用される」というイメージを持つ場合、信用が損なわれる恐れがあるでしょう。
しかし、バーチャルオフィス自体は違法性のないサービスです。また、現在は犯罪収益移転防止法の規制を受ける業種として、本人確認を含む厳格な審査が義務付けられています。そのため、適切な入会フローで運営されているバーチャルオフィスが悪用される可能性は限りなく低いでしょう。
取引先にはバーチャルオフィスの適法性や利用目的を正直に説明し、理解を得ることが重要です。
オフィス機能が最小限のため「簡易的」な印象を与えやすい
バーチャルオフィスはオフィス機能が最小限であり、簡易的な印象を与えやすい傾向があります。実際に執務に取り組める環境がないため、「本気でビジネスを営んでいるのか」という懸念を持たれる恐れがあります。
実際の執務スペースの実態やビジネスモデルなど、真摯に事業を営んでいる旨をしっかりと伝えることが大切です。
また、「顧客対応ができない」や「郵便の受け取りが遅れる」といった理由で不信感を抱かれる可能性があります。受付サービスや郵便転送など、簡易的ながらもしっかりと拠点として機能するバーチャルオフィスを選ぶのが有効です。
バーチャルオフィスでも信用されるケースは多数
先述したとおり、バーチャルオフィスは信用が課題となる理由はいくつかあります。しかし、実際はバーチャルオフィスでも信用されるケースは多く、大手企業による活用も少なくありません。
以下では、バーチャルオフィスの「信用」についての実情を紹介します。
大手企業や士業、スタートアップでも活用例は多い
バーチャルオフィスは、以下のような幅広い事業者に活用されています。
- リモートワークの環境を整えたい大手企業
- 自宅住所の公開を避けたい士業
- コストを抑えて事業を始めたいスタートアップ
- 試験的に新たなエリアに進出したい事業者
対外的な信頼性が重視される大手企業や士業にも広く活用されています。「バーチャルオフィスは信用を得られない」という認識は適切ではないでしょう。言い換えれば、事業計画が明確で実績があれば、バーチャルオフィスでもマイナスの印象にはならないはずです。
ビジネスの内容や取引履歴が信用につながる
バーチャルオフィスを活用していても、事業内容が明確であり、取引履歴が充実していれば対外的な信用を得られます。
バーチャルオフィスが信用を得づらい理由として、事業の実態が確認しにくい点が挙げられます。しかし、事業内容が明確であれば、適切に事業を運営している企業という印象を与えられるでしょう。
また、取引履歴は実際に事業を運営し、売上を創出しているという客観的な証拠になります。取引先からすると、自社以外と取引をしているという事実は大きな安心材料になるはずです。
取引履歴は積み重ねるほど信頼や安心感を与えられます。まずは真摯に事業に向き合い、企業を育てることが重要です。
「バーチャルオフィス=信頼できない」というのは過去のイメージに過ぎない
現在は多くの企業がバーチャルオフィスを活用しています。「バーチャルオフィスは信用できない」というのは過去のイメージに過ぎないでしょう。
現在は、IT技術の発展や働き方改革の推進、リモートワークの普及などが背景となり、働き方が大きく変化しました。自宅でも柔軟に働ける環境になり、オフィス形態の多様化も顕著に見られます。
実際、バーチャルオフィスを含むフレキシブルオフィスの市場規模は拡大傾向にあり、徐々に認知度も高まっています。バーチャルオフィスが徐々に一般的な選択肢になることで、「バーチャルオフィスは一律で信頼できない」と感じる方は減少していくでしょう。
また、今後バーチャルオフィスの認知度が高まり続けることで、より当たり前の選択肢となるはずです。将来的には、現在よりも対外的な信用に影響を与えなくなるでしょう。
バーチャルオフィスで信用を高めるためにできること
バーチャルオフィスは一般的な選択肢になりつつありますが、未だ懸念を持たれることがあります。バーチャルオフィスを活用する際は、いかに対外的な信用を高めるかが重要です。
バーチャルオフィスで信用を高めるための代表的な対策は以下の5つです。以下では、それぞれの対策を詳しく解説します。
- 信頼性の高いバーチャルオフィスを選ぶ
- 事業実態を示す資料やメディアを整える
- 対面やWeb会議での丁寧な対応を意識する
- Googleビジネスプロフィールなどの活用で「存在」を可視化する
- 登記住所と実際の業務実態の乖離をできるだけ少なくする
信頼性の高いバーチャルオフィスを選ぶ
信頼性の高いバーチャルオフィスを選ぶことで、対外的な信用を高められます。具体的に着目すべき主なポイントは、以下のとおりです。
- 運営会社の概要・資本金
- 運営会社の実績
- サービスの運営歴
- レスポンスの早さ
- 立地・ビルの外観
- サービス内容
- 厳格な審査が実施されているか
- 過去に犯罪やトラブルが発生した住所ではないか
実績が豊富で、サービス内容や住所地も信頼できる事業者であれば、取引先が企業の所在地を調べた際に安心感を与えられます。
また、別の事業者にバーチャルオフィスの住所が悪用されると、自社の住所にも傷がついてしまいます。そのため、審査・管理体制を整備して住所の悪用を防止している事業者であれば、将来的にも信用を維持できるはずです。
一方、所在地で過去に犯罪が起きていたり、運営会社が怪しかったりすると、取引先からの信用は得られないでしょう。
事業実態を示す資料やメディアを整える
バーチャルオフィスで信用を高めるためには、以下のような事業実態を示す資料を整えることが大切です。
- ホームページ
- パンフレット
- 会社概要
- 名刺
- SNSアカウント
バーチャルオフィスが懸念を持たれやすい理由のひとつは、事業の実態がないことです。ホームページやパンフレットを整え、サービスや活動内容、導入実績などを示すことで、確実に事業を営んでいると伝えられます。
ただし、著しく簡素なホームページや更新されていないSNSアカウントは、かえって不信感を与えてしまいます。これらは有効なマーケティングツールにもなるため、早期に充実させるのがおすすめです。
対面やWeb会議での丁寧な対応を意識する
バーチャルオフィスで取引先からの信頼を得るためには、丁寧な対応を意識することが大切です。対面やWeb会議の場で丁寧かつ誠実に取引先やビジネスと向き合うことで、信用を積み重ねられます。代表者本人の信頼が構築されれば、バーチャルオフィスでも不審に思われることはなくなるでしょう。
また、携帯電話番号やメールアドレスの共有など、いつでも連絡が取れる体制を整えることも重要です。取引先からの連絡にすぐに対応することで、信頼感や安心感を与えられます。
Googleビジネスプロフィールなどの活用で「存在」を可視化する
インターネット上に企業の存在を広く可視化する方法も有力です。具体的には、以下のような方法が考えられます。
- 実際に仕事を行う作業場をGoogleビジネスプロフィールに登録する
- ホームページを開設し、企業名で検索された際に検索結果に表示されるようにする
- 各業界の口コミサイトやポータルサイトに登録する
存在を可視化すれば、取引先や顧客は事業の実態を把握でき、架空の会社であるという懸念が払拭されるでしょう。
ただし、Googleビジネスプロフィールでは、バーチャルオフィスの住所で運営されている事業所の登録が規約により認められていません。各種プラットフォームを利用する際は、バーチャルオフィスの取り扱いを確認しましょう。
登記住所と実際の業務実態の乖離をできるだけ少なくする
登記住所と実際の事業実態の乖離を少なくすることも意識しましょう。バーチャルオフィスの所在地と業務実態の関連性を伝えられれば、事業の実態を疑われにくくなります。
具体的な対策方法の例は、以下のとおりです。
- 打ち合わせはバーチャルオフィスの会議室で実施する
- 受付サービスがあるバーチャルオフィスを選ぶ
このような対策を行うことで、バーチャルオフィスの住所を公開する理由が明確になり、外部に納得感を与えられます。
業種や取引先に応じた対応も重要
バーチャルオフィスで信用を得るには、業種や取引先に応じた対策も重要です。ここでは、以下の3つの視点から具体的な対応を解説します。
- 信頼性が重視される業界では別の拠点を併用するのも選択肢
- BtoB取引では信頼構築に時間をかけることが有効
- 融資や助成金など公的制度を利用する場合の注意点
信頼性が重視される業界では別の拠点を併用するのも選択肢
バーチャルオフィスは、一般的な賃貸オフィスと比べると、信頼性の面で不利になる傾向があります。信頼性が強く重視される業界の場合、バーチャルオフィス以外の拠点を併用するのもひとつの選択肢です。
たとえば、来客対応を専門的に行うサテライトオフィスの設置などが考えられます。バーチャルオフィスを活用して事業を効率化しながら、企業専用の物理的なオフィスで面談や打ち合わせを実施できます。
BtoB取引では信頼構築に時間をかけることが有効
BtoB取引では、信頼構築に時間をかけることが有効です。
通常、BtoBはBtoCよりも取引に時間がかかる傾向があります。また、企業は個人消費者よりも取引先の信頼性を重視する傾向があり、取引も長期的に続く可能性があります。じっくりと信頼関係を構築することで、中・長期的にお互いを信頼した取引が可能となるでしょう。
具体的には、丁寧なコミュニケーションや迅速なレスポンス、誠実にビジネスに向き合う姿勢などが大切です。また、第一印象が悪いと信頼構築に移る前に取引が終わってしまう恐れがあります。そのため、ホームページや会社案内で事業の実態を示すなど、第一印象を考慮した取り組みを意識しましょう。
融資や助成金など公的制度を利用する場合の注意点
融資や助成金などの公的制度を利用する場合、一般的な賃貸オフィスと比べて条件や難易度が厳しくなる可能性があります。
バーチャルオフィスで公的制度の審査を受ける際には、事業の実態が重要視されます。具体的には、追加資料の提出や事業実態の説明を求められることが一般的です。円滑に審査を進めるためにも、最初から補足資料を提出しておくことをおすすめします。
また、バーチャルオフィスでは、各自治体が実施する制度融資や助成金を受けられないケースがあります。これらの方法で資金調達を行う際は、事前に各自治体のホームページで制度の詳細を確認しましょう。
バーチャルオフィスを使いながら信用を築くための心構え
バーチャルオフィスを活用しながら信頼を築くためには、以下の心構えが重要です。以下では、それぞれを詳しく解説します。
- 外見ではなく「中身」で信頼されるビジネスを
- 透明性と誠実な対応こそが最大の信用力になる
外見ではなく「中身」で信頼されるビジネスを
バーチャルオフィスを使いながら信用を築くためには、外見ではなく中身で信頼されるビジネスを目指しましょう。具体的には、オフィス形態で信用を示すのではなく、事業内容や実績、取引先への対応で信頼を得る意識が重要です。
対外的な信頼を初対面で勝ち取ることは簡単ではありません。真摯にビジネスに取り組み、実績を積み上げていくことで、徐々に取引先から信用されるようになるはずです。
透明性と誠実な対応こそが最大の信用力になる
ビジネスでは、透明性や誠実な対応が最大の信用力となります。
取引先と初めて対面する際は、バーチャルオフィスを利用している点を含め、事業内容をしっかりと伝えましょう。説明に対して質問を受けた場合も、誠実に受け答えする姿勢が大切です。
また、その後の付き合いにおいてもレスポンスは迅速に行い、丁寧な仕事を心がけましょう。透明性を持って誠実に対応すれば、徐々に信頼関係が構築され、バーチャルオフィスでも円滑な取引が可能となります。
まとめ
働き方が多様化している現在では、バーチャルオフィスはオフィス形態のひとつとして徐々に一般化しています。しかし、取引先が仕組みを適切に理解していない場合、「バーチャルオフィスは信用できない」と懸念を抱かせる恐れがあります。
バーチャルオフィスで対外的な信用を得るには、事業の実態を明確にし、誠実かつ真摯にビジネスに取り組むことが重要です。オフィス形態ではなく中身で信頼されるビジネスを展開すれば、バーチャルオフィスのメリットを最大限に活かせるでしょう。
また、契約するバーチャルオフィスによっても、対外的な信頼が変動します。これからバーチャルオフィスを契約する方は、バーチャルオフィス事業者の信頼性やサービス内容にも着目してみましょう。
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