アパレルブランド立ち上げガイド|起業に必要な手順と成功の秘訣

起業してアパレルブランドを立ち上げることには、自由にブランドを作り出せるクリエイティブな魅力があります。また、ファッションに興味があれば未経験でも挑戦でき、アクセサリーやバッグといった幅広い商品を取り扱える点もメリットです。

しかし、全員が必ずしも起業して成功できるとは限りません。ファッション分野以外にもブランディングやマーケティングの知識が求められ、入念な事業計画の作成も必須です。

本記事では、アパレルブランドを立ち上げる手順や成功のコツなどを解説します。「アパレル起業で成功するには何をすべきか」が理解できるため、ぜひご覧ください。

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アパレル起業の魅力と難しさ

アパレル起業には自由にブランドを作り出せるクリエイティブな魅力があり、ファッションに興味があれば特別な資格なしで挑戦できます。さらに、SNSやオンラインショッピングの普及、起業文化の浸透なども柔軟なアパレルブランドの運営を後押ししています。ファッションに興味があり、起業に挑戦したい方にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。

しかし、アパレル起業で成功する難易度は決して低くはありません。市場競争が激しく、在庫リスクが発生するなど、経営上の課題が多く存在します。店舗型で運営する場合は莫大な初期費用や固定費もかかるため、入念な市場調査や資金計画、事業戦略の立案は必須です。

アパレル起業で必要な知識は、ファッション分野以外にも、ブランディングやマーケティング、財務管理など多岐にわたります。ビジネスとして展開するからには、自分が興味を持つ分野以外にも意識を向けて行動する必要がある点に留意しましょう。

アパレルブランド立ち上げの手順

アパレルブランドを立ち上げる手順は、大きく以下のとおりです。以下では、各工程について詳しく解説します。

  1. コンセプト設計とターゲット設定
  2. ビジネスプランの作成
  3. 資金調達とコスト管理
  4. 商品開発と生産
  5. ブランドロゴ・タグ・パッケージデザインの制作
  6. 販売チャネルの確保

①コンセプト設計とターゲット設定

アパレル起業を行う際には、ブランドのコンセプトとターゲットを明確にします。

ブランドコンセプトとは、ブランドの軸となる想いや価値を言語化したものです。設定したブランドコンセプトに沿って、商品の開発やマーケティング戦略を実施します。ブランドコンセプトが明確になると、事業の運営方針が明確になり、消費者に対してブランドの価値を示すことが可能です。

一方、コンセプトが曖昧だと、事業の一貫性がなくなり、誰のイメージにも残りにくいブランドになってしまいます。差別化できず固定ファンを作れない原因となるため、コンセプトの設計は必須の工程です。

同時にターゲット市場も明確化しましょう。理想となる仮の消費者である「ペルソナ」を設定することがコツです。具体的には、以下のようなイメージで設定すると良いでしょう。

  • 性別:男性
  • 年齢層:10代後半から20代後半
  • ライフスタイル:平日はIT企業のリモート勤務で土日はセレクトショップを巡っている。SNSでの情報収集は欠かせない。
  • ファッションの好み:流行を踏まえたストリート系の服装が好みであり、価格に敏感
  • 年収:300万円前後(あまり余裕はない)

ターゲット層が決まっていれば、生産するアイテムやマーケティング戦略が明確になります。

②ビジネスプランの作成

コンセプトやターゲットを設定したら、ビジネスプランの作成に移ります。ビジネスプランは、頭のなかのイメージで完結させるのではなく、事業計画書として作成することがおすすめです。

事業計画書の作成により、目標や事業内容、財務計画などを具体化でき、矛盾や検討不足の項目を洗い出せます。また、外部から資金調達を行う場合は事業計画書の提出が必要であり、審査結果を左右するといっても過言ではありません。

加えて、アパレル起業では、収益モデルの選定が事業の方針を大きく左右します。アパレル企業の代表的な収益モデルは、以下のとおりです。

  • 実店舗を構えて販売する
  • オンライン販売のみで運営する
  • 卸売やセレクトショップに販売する
  • サブスク形式でレンタルする
  • ポップアップストアに出店する

アパレル起業=実店舗を構えるとイメージする方もいますが、店舗の取得・維持には莫大な資金を要します。現在はオンライン販売を中心として、コストを抑えつつ事業規模の拡大を図るケースも多くあります。

③資金調達とコスト管理

資金調達やコスト管理もアパレル起業において必須の工程です。アパレル起業で必要な初期資金は収益モデルによって異なりますが、一例は以下のとおりです。

  • 店舗取得費(敷金/礼金/内装工事費/什器備品の購入費など)
  • ネットショップの開設費用
  • 在庫を保管する倉庫の取得費
  • アイテムのデザイン・製造費用
  • 商品の販促費用
  • 物流費用
  • 当面の運転資金(家賃/広告宣伝費/生活費など)

事業計画書の作成の段階で、必要な初期資金額を明確にしましょう。当面の運転資金は多いほど長期の赤字期間に耐えられ、一般的には3〜6ヶ月分程度の資金が用意されます。

また、初期費用が明確になったら、資金調達方法を検討しましょう。自己資金で賄えれば理想ですが、外部から資金調達を行う場合、以下のような手段があります。

  • 融資
  • 出資
  • クラウドファンディング
  • 補助金・助成金

それぞれメリット・デメリットが異なるため、運営の方針に合わせて選択しましょう。

④商品開発と生産

ブランドオリジナルの商品を開発する場合、OEMで工場に外注する選択肢が基本となります。商品開発から生産までの流れは、大きく以下のとおりです。

  1. コンセプトに基づいた商品イメージを決定
  2. 生地や装飾など細部のイメージを決定
  3. デザイン指示書を作成
  4. 生地や装飾品の決定
  5. パターンの作成
  6. サンプルの作成・ディティールの確認
  7. (サンプルに問題がなければ)見積もり・生産枚数の決定
  8. 製造依頼・納品

満足できる仕上がりの商品開発や生産を円滑に進めるには、信頼できる工場と契約することが重要です。具体的には、以下のような点に着目しましょう。

  • 予算内に収まる料金であるか
  • 円滑にコミュニケーションが取れるか
  • 商品で用いる素材を取り扱えるか
  • 小ロットの生産に対応しているか
  • 生地の調達や二次加工といったサービスが提供されているか

また、企画やデザインの難易度が高いと判断した場合、ODMの選択肢も有力です。デザインの自由度は低いですが、工場が企画からデザイン、製造を担当してくれるため、専門知識がない方でも商品を生産できます。

⑤ブランドロゴ・タグ・パッケージデザインの制作

商品開発・生産にも大きくかかわる要素ですが、ブランドロゴやタグ、パッケージデザインの制作は、ブランドイメージを形にする重要な工程です。

ロゴやタグ、パッケージは商品の世界観やコンセプトを伝える要素です。消費者の第一印象になるため、コンセプトやターゲットを踏まえ、力を入れてデザインしましょう。

これらのデザインは、自作または外部デザイナーへの依頼によって行います。一言でデザイナーといっても、デザイン会社とフリーランスでは対応や費用相場が異なります。それぞれの特徴を確認したうえで最適な依頼先を決定しましょう。

⑥販売チャネルの確保

アパレル起業における販売チャネルは、大きく以下の2つに分けられます。

  • オンライン販売(自社EC/モール出店)
  • オフライン販売(店舗販売/ポップアップ/卸販売)

それぞれの手法でメリット・デメリットは異なります。たとえば、オンライン販売はコストを抑えて商品を販売可能で、全国の消費者をターゲットにできる点がメリットです。一方、競合他社が多く、消費者は商品を直接手に取って検討できません。他にも、店舗型の販売は商品を直接手に取ってもらえ、競合他社との差別化がしやすいですが、店舗の取得費や固定費がかかるのが難点です。

それぞれのメリット・デメリットを考慮し、事業の方向性に適した方法を選択または組み合わせましょう。

また、商品の集客戦略として、SNSアカウントの運用が挙げられます。SNSアカウントで自社商品を紹介し、ユーザーと直接交流することで、ブランドの認知度を高められます。他の集客戦略と比べてコストも最小限に抑えられるため、起業直後のマーケティング施策として非常に有力です。

アパレル起業で成功するための秘訣

アパレル起業で成功するためには、以下のようなポイントを押さえた事業運営が重要です。以下では、それぞれのポイントを詳しく解説します。

  • 市場ニーズを的確に捉える
  • ブランディングとマーケティングを行う
  • 初期投資を抑えリスク管理を徹底する
  • 顧客との関係性を深める

市場ニーズを的確に捉える

アパレル起業で成功するためには、市場ニーズを的確に捉えることが重要です。アパレル業界のトレンドは、日々急激に変化しています。商品と市場ニーズが一致していないと、高品質なアイテムであってもなかなか売れません。トレンドの変化に柔軟に対応し、製品開発に反映させることを意識しましょう。

最新のトレンドは、以下のような媒体からリサーチできます。

  • ファッション雑誌
  • Webメディア
  • インフルエンサーの動向
  • 実店舗に並ぶ商品
  • 競合ブランド
  • Google検索の傾向
  • ファッションウィークの動向

ただし、トレンドを意識するあまりコンセプトから大きく離れてしまうと、独自性が失われ、他のブランドとの差別化が難しくなります。既存ファンが離れる要因になりかねないため、いかにトレンドと独自性を両立させるかが成功のポイントです。

ブランディングとマーケティングを行う

アパレル起業で成功するためには、ブランディングとマーケティング活動が重要です。

ブランディングとは、消費者が共通して持つ特定ブランドのイメージを指します。ブランディングに成功すると、「〇〇のファッションなら△△」というイメージが生まれ、明確な差別化要素となります。結果的に、固定ファンの獲得や価格競争からの脱却を実現可能です。

有効にブランディングを行うには、ストーリー性のあるブランド作りが重要です。ストーリーが企業のイメージとして確立され、共感した消費者がファンになり、継続した顧客を獲得できます。

同時に、ブランド・商品の認知度を高め、商品購入につなげるマーケティング戦略も実施しましょう。アパレル起業における有力なマーケティング施策は、以下のとおりです。

  • インフルエンサーの起用
  • ホームページの開設
  • SNSアカウントの運用
  • ポップアップストアへの出店
  • 広告による宣伝
  • メルマガ配信

どんなに良い商品を制作しても、認知されなければ売上にはつながりません。適切な施策はターゲット層によって異なるため、「いかにターゲット層にブランドの魅力を届けるか」を意識して戦略を立てましょう。

初期投資を抑えリスク管理を徹底する

初期費用を抑え、リスク管理を徹底することで、事業の存続率を高められます。

資金調達を行い、最初から莫大な資金を投じてしまうと、月々の返済や利息の負担で資金繰りが圧迫される原因となります。万が一事業に失敗した際の損失も大きくなるため、スモールスタートを意識しましょう。

事業規模を拡大するのは、スモールスタートした事業が軌道に乗ってからでも十分に間に合います。初期費用を抑え、リスク管理を行うための具体的な取り組みは、以下のとおりです。

  • 店舗を構えず、オンライン販売型で運営する
  • 製造コストを抑えるために商品数やカテゴリを絞る
  • 受注生産や少数生産の採用により、保管コストや在庫リスクを抑える
  • テスト販売からスタートする

顧客との関係性を深める

アパレル起業で成功するためには、いかにブランドのファンを作るかが重要です。ブランドのファンを作ることでリピート率が向上し、口コミでブランドの魅力が広がる効果も期待できます。

ブランドのファンを作るには、顧客との関係性を深める施策が重要です。具体的な例をいくつか紹介します。

  • SNSでの情報発信
  • SNSのコメントへの返信
  • 充実したアフターサービスの提供
  • 問い合わせ窓口の提供
  • 会員制度の導入
  • リアルイベントの開催

このような取り組みを通じ、長く応援してくれる顧客を増やすことで、中・長期的にブランドを存続できるようになるでしょう。

アパレルブランド立ち上げ成功事例

アパレルブランドの立ち上げには、さまざまな成功事例が存在します。ここでは、以下の3つの例を挙げて成功事例を紹介します。

  • Knuth Marfの成功事例
  • Everlaneの成功事例
  • ETRE TOKYOの成功事例

Knuth Marfの成功事例

Knuth Marfは、レディース・ユニセックス向けの商品を展開しているアパレルブランドです。2021年11月にブランドが誕生し、わずか1年で年商5億円を達成しています。

Knuth Marfのインタビューによれば、チーム内で得意分野が明確であることを強みと考えているようです。業務の多くをチーム内で完結でき、原価率が高くても利益を確保できている点が特徴です。

また、自社店舗を持たず、オンラインを主軸として商品が販売されています。コストを抑えて事業を展開することで、利益率の向上を実現していると考えられます。

Everlaneの成功事例

Everlaneは、オンライン販売を中心に事業を展開するアメリカのファッションブランドです。オンライン販売を主軸とすることで、コストカットを実現し、製品価格を抑えています。

また、すべての商品のコストを明示している点も大きな特徴です。オンラインストアでは、商品ごとに材料費や人件費、輸送費が公開されており、消費者は納得感を持ってアイテムを購入することが可能です。

さらに、Everlaneでは小ロット生産型の戦略が採用されています。在庫を抱えるリスクを抑え、サステナブルな運営を実現しています。

ETRE TOKYOの成功事例

ETRE TOKYOは、25〜30代の女性をターゲットにしたアパレルブランドです。特徴のひとつは、Instagramを活用したマーケティング戦略です。

Instagramのフォロワー数は20万人を超え、1日に1〜3本程度の投稿がされています。さらに、インスタライブも頻繁に実施されており、消費者からの認知度を高めています。

また、ファッションインフルエンサーである「JUNNA(杉田純奈)氏」をクリエイティブディレクターとして採用している点も特徴です。ETRE TOKYO=JUNNA氏というブランディング効果を発揮し、既存フォロワーへのリーチも期待できます。

まとめ

アパレル起業はファッションに興味があれば特定の資格なしで挑戦でき、自由にブランドを作り上げる魅力を味わえます。SNSやオンラインショッピングが普及したことで、低リスクかつ戦略的な事業運営が可能です。

しかし、全員が必ず成功できるわけではなく、店舗型の販売を採用する場合には、一定の初期費用や運営コストも発生します。アパレル起業で成功するには、ブランドコンセプトやターゲットを明確にして、戦略的にマーケティング施策に取り組むことが重要です。まずはスモールスタートで事業を開始し、資金管理やリスクヘッジを意識しながら事業の拡大を図りましょう。

ニーズが多様で販売戦略の選択肢が広いアパレル起業は、戦略的に取り組めば十分に成功を目指せるビジネスです。本記事の内容を参考にして、ぜひ挑戦してみてください。

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