現在はIT技術の発達により、インターネット上で取引が完結する「ネット起業」に取り組む方が増加傾向にあります。
低コストでスモールスタートできるネット起業は、リスクを抑えてビジネスに挑戦したい方に最適です。さらに、場所や時間にとらわれず働けるため、ワーク・ライフ・バランスを重視した職業選択にも適しています。
しかし、自己管理が難しく、詐欺や怪しい情報に惑わされるリスクがあるなどの懸念点もあります。メリット・デメリットを適切に理解したうえで、ネット起業が自分に適したビジネスモデルであるかを判断しましょう。
本記事では、ネット起業の概要や始め方、メリット・デメリット、必要なスキルなどを解説します。「ネット起業に挑戦すべきか」や「成功のために何をすべきか」などが理解できるため、ぜひご覧ください。
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ネット起業とは?基本の仕組みと魅力
ネット起業とは、「インターネット上で取引を行うビジネスモデル(ネットビジネス)で起業すること」です。商品の販売や決済、顧客サポートなど、すべての手続きをインターネット上で行います。基本的に事業者と顧客が対面で顔を合わせることはありません。実店舗を持ちながらEC販売を行うような事業は、通常ネット起業には該当しないと考えられます。
ネット起業の大きな特徴は、低コスト・低リスクで始められる点です。物理的な事業所の取得は不要であり、初期コスト・ランニングコストを抑えて起業できます。一人で運営できるビジネスが多いためスモールスタートができ、事業の成長に合わせて徐々に規模を拡大することも可能です。
加えて、リアルタイムでの顧客対応や店舗の営業時間がない点もポイントです。パソコンと通信環境があれば、場所や時間に縛られず自由に働けます。
このような特性から、仕事とプライベートを柔軟に両立したい方や、副業起業に挑戦したい方など、幅広い方に適しています。
ネット起業の代表的なビジネスモデル
ネット起業の代表的なビジネスモデルには、以下のようなものがあります。以下では、それぞれのビジネスモデルについて詳しく解説します。
- ネットショップ運営
- オンラインスクール
- コンテンツ販売
- 請負ビジネス
ネットショップ運営
ネットショップ運営とは、インターネット上に自分の店舗を持ち、商品を販売するビジネスモデルです。物理的な店舗が不要である分、コストを抑えて起業でき、全国・全世界の消費者をターゲットにできる点が大きな魅力です。現在は、インターネットを使って買い物する層が増加傾向にあるため、特に需要が高いビジネスといえます。
販売する商品や運営形態は、大きく以下のように多岐にわたります。
- 自社商品やハンドメイド商品
- 他のネットショップや質屋などから仕入れた商品
- 顧客からの注文後にメーカーから直接商品を発送(ドロップシッピング)
また、インターネット上に持つ店舗の種類は、大きく以下の2つです。販売する商品やビジネスの規模、差別化戦略などを踏まえて決定しましょう。
- ショッピングモール型のサイト(Amazon/楽天など)に出店
- 自分専用のECサイトを運営
ただし、出品する商品によっては「古物商許可」などの許認可が必要となります。また、特定商取引法に基づく表記として、自宅住所などの公開が求められる点に留意しましょう。
オンラインスクール
オンラインスクールとは、ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議ツールを用いて授業を実施するビジネスモデルです。店舗が不要であるため低コストで始められ、全国から生徒を集められます。
一言でオンラインスクールといっても、以下のようにさまざまな種類が存在します。
- 学習サポート
- 英会話
- プログラミング
- 投資
- 音楽
自分の得意分野や専門性を活かせる分野に参入しやすい点も魅力です。また、経営者本人に専門的なスキルがない場合、専門性の高い講師を採用する方法もあります。授業はリアルタイムで実施するだけでなく、録画動画を配信する方法もあるため、運営方針や分野に合わせて選択しましょう。
ただし、スポーツや介護など、対面指導が重要となる分野の場合、オンラインでの運営は向いていない可能性があります。
コンテンツ販売
コンテンツ販売とは、自身のWebサイトやSNSを用いて情報商材や動画コンテンツなどを販売するビジネスモデルです。ネットショップ運営とは異なり、物理的な商品ではなくダウンロード型の商品や、コンテンツを閲覧する権利などを販売します。その特性から、仕入れにかかる費用がなく、在庫を抱えるリスクもありません。
一例として、販売するコンテンツには以下のようなものがあります。
- 投資で利益を最大化させるためのノウハウ
- ビジネスの運営テクニック
- 恋愛を成就させるためのノウハウ
- 体験談と理論を融合させたダイエット方法
コンテンツの販売は、電子書籍の配信や購入者へのデータ送付、購入者向けの専用ページの共有といった手法があります。
また、情報ではなく自分そのものに価値を感じてもらい、ファン向けにコンテンツを配信する方法も有力です。いわゆるインフルエンサーのような立ち回りであり、サブスクリプション形式で毎月安定した収益を得るマネタイズも目指せます。
請負ビジネス
請負ビジネスとは、クライアントから依頼された成果物を納品する対価として報酬を得るビジネスモデルです。具体的には、以下のような職種として活動します。
- Webライター
- Webデザイナー
- プログラマー
- イラストレーター
- 動画編集者
請負ビジネスは、成果物を納品した段階で報酬が発生するため、即金性に優れています。また、働いた分だけ確実に報酬が増える点も魅力です。自分の専門性を活かしやすく、クラウドソーシングサービスやSNSを活用すれば、比較的案件も見つけやすい傾向があります。
一方で、自分の時間を使って成果物を制作する特性上、収益性には限界があります。加えて、自分が稼働できなくなったら報酬が途絶えてしまう点にも注意が必要です。
初心者がネット起業で成功するために必要な準備
初心者ネット起業を行うまでの流れは、大きく以下のとおりです。以下では、それぞれの工程について詳しく解説します。
- ビジネスプランの策定
- 資金調達
- 備品の購入・インターネット環境の整備
- 開業手続き・法人設立手続き
ビジネスプランの策定
ネット起業を目指す際は、まずビジネスプランを策定します。
先述した代表的なビジネスモデル以外にも、ネットビジネスで稼ぐ方法は多岐にわたります。自分の興味や得意不得意、市場の状況などを踏まえ、ビジネスプランを決定しましょう。
大まかなビジネスプランを決めたら、ターゲット層や財務計画、将来の見通しなどを事業計画書にまとめます。ビジネスとして成立するかをシミュレーションしたうえで、事業計画のブラッシュアップや再考を行いましょう。
資金調達
ネット起業は賃貸事務所の契約が不要であり、スモールスタートが可能であるため、莫大な初期資金は不要です。大まかには以下のような費用で開業できます。
- パソコンやデスクなどの備品の購入費
- インターネット環境の整備費
- 当面の運転資金・生活費
事業計画書を作成する段階で、どのくらいの資金が必要になるかを入念に計算することが大切です。起業資金は自己資金が理想ですが、不足する場合は融資や補助金・助成金などによる資金調達も視野に入れましょう。
なお、当面の生活費については、3〜6ヶ月程度無収入でも生活できる程度が目安です。当面の生活費が多いほど、利益が出ない期間も事業を継続でき、心理的な余裕も生まれるでしょう。ただし、当面の生活費の目安は、事業内容によって大きく変動します。請負ビジネスのように即金性が高い事業がある一方で、アフィリエイトビジネスのように収益化まで半年程度かかる事業も存在します。業界の平均値や先輩起業家の体験談などを踏まえ、適切に見積もることが大切です。
備品の購入・インターネット環境の整備
必要な資金を調達したら、パソコンやデスクといった備品の購入、インターネット環境の整備を行います。
すでに自宅にインターネット環境や各種備品が整っている場合、基本的にはそのまま利用しても問題ありません。ただし、インターネット回線の速度が極端に遅い場合や、パソコンのスペックが低い場合などは新規調達を検討しましょう。
処理速度が遅くなると作業効率が低下し、収益性が落ちる原因となります。特に動画編集やプログラミングといった高度な処理を行う場合、作業がまったく進まないといった事態も考えられます。
本格的に事業を開始する前にテストで事業内容に近い処理を行い、円滑に作業を進められるかどうかを見極めましょう。
開業手続き・法人設立手続き
ネット起業の起業形態は、大きく以下の2つに分けられます。
- 個人事業主として開業
- 法人(株式会社/合同会社など)の設立
これからネット起業を行う場合、基本的には個人事業主としての開業がおすすめです。個人事業主としての開業であれば、管轄の税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了し、基本的に公的費用もかかりません。また、起業直後で所得が少ない時期は、法人よりも税負担を抑えやすい点も魅力です。
法人を設立する場合、開業手続きが複雑であり、20万円以上の公的費用(株式会社の場合)がかかります。個人事業主として開業しても、その後に法人化できるため、まずは手軽に開業でき、税負担も抑えやすい個人事業主としての起業を検討しましょう。
ネット起業のメリットとデメリット
さまざまなメリットがあるネット起業ですが、一般的な起業と比べたデメリットも存在します。以下では、ネット起業のメリット・デメリットを詳しく解説します。
ネット起業のメリット
ネット起業には、以下のようなメリットがあります。
- 低コスト・低リスクで開始できる
- 自由な働き方ができる
- 自分のスキルを活かせる
- スモールスタートでも成長できる
ネット起業はパソコンと通信環境があれば開始できるため、初期費用を抑えた低リスクな起業が可能です。また、自宅の一室で作業ができ、営業時間やリアルタイムでの顧客対応がないことから、時間や場所にとらわれず働けます。
プログラミングやWebデザイン、オンラインスクールなど、自分のスキルを活かしやすいビジネスモデルが多い点も魅力です。さらに、スモールスタートで起業しても、その後に事業規模を拡大することも可能です。たとえば、オンラインスクールの運営では、生徒数が増えた段階で外部の講師を雇い、授業数を増やしていくといった戦略を取れます。
このような特性から、以下のような方に向いている事業形態といえます。
- 費用を抑えた低リスクな起業に挑戦したい
- 副業として事業を始めたい
- 自分の専門性やスキルを活かして働きたい
- 将来的には事業を大規模に成長させたい
ネット起業のデメリット
一方、ネット起業には以下のようなデメリットがあります。
- 収益が安定するまで時間がかかる
- 集客の難易度が高い
- 自己管理が難しい
- 詐欺や怪しい情報に惑わされるリスクがある
ネット起業は開業のハードルが低いという特性上、競合他社が多い傾向があります。実績のない時期は仕事を見つけるのに苦労し、なかなか収益が安定しない可能性があるため要注意です。また、現在はユーザーニーズやマーケティング手法が多様化していることから、集客にも工夫が必要です。競合他社との差別化や最新の傾向・ノウハウを踏まえた集客を行い、いかに収益を安定させるかが課題となるでしょう。
さらに、営業時間という概念がなく、自宅で事業を運営できることから、プライベートと仕事が混合してしまう可能性があります。誘惑が多い環境でも仕事に取り組むメリハリや自己管理能力が求められます。
加えて、近年はネットビジネスと称した詐欺や怪しい情報が多く見られるため注意しましょう。たとえば、ネットワークビジネスの勧誘や高額商材の販売、投資詐欺などの被害情報があります。情報を鵜呑みにせず、しっかりと吟味する能力や意識が重要です。
ネット起業に必要なスキル・知識
ネット起業で成功するためには、以下のようなスキルや知識が必要です。以下では、それぞれの要素を詳しく解説します。
- 最低限のITリテラシー
- マーケティング・集客ノウハウ
- 会計・税務の基礎知識
最低限のITリテラシー
ネット起業で成功するためには、最低限のITリテラシーが求められます。特に重要となるITリテラシーは、以下のとおりです。
- プライバシーやセキュリティに関する知識
- 情報の信頼性や正確性を判断する知識
- パソコンやソフトウェアの使用方法
- SNSやWebサイトでの情報発信時のマナー
- 個人情報保護に関する知識
パソコンを使ってビジネスを営むという特性上、パソコンや関連するソフトウェアは最低限使用できなければなりません。また、インターネットで発信した情報は、一瞬で全世界のユーザーに届くため、マナーや個人情報保護を意識する必要があります。
個人情報保護やSNSでのマナー、セキュリティ関連でのトラブルを起こすと、取引先や顧客からの信頼を一気に失う原因となります。自信がない方は、事前にセミナーの活用や資格取得(ITパスポートなど)を通じて、最低限の知識を習得しましょう。
マーケティング・集客ノウハウ
ネット起業で成功するためには、効果的なマーケティング施策を講じ、安定した集客を得ることが大切です。現在は、ユーザーニーズやマーケティング手法が多様化しており、的確にターゲティングや施策の選択を行わなければなかなか集客できません。
ネット起業における代表的なマーケティング手法は、以下のとおりです。
- Webサイトの開設
- オウンドメディアの運営
- SNSアカウントの運用
- Web広告(SNS広告/リスティング広告など)の配信
- インフルエンサーマーケティング
- メールマガジンの配信
それぞれコストや相性が良い事業内容・ターゲット層が異なります。各マーケティング手法の特徴を理解し、効果的な施策を選択・組み合わせましょう。
会計・税務の基礎知識
ネット起業に限らず、起業時には会計や税務の基礎知識が必要です。
起業すると、日々の取引内容をもとに帳簿を作成し、確定申告を行う必要があります。基本的な仕訳や税金の知識がないと適切に手続きが行えず、確定申告をおろそかにすると延滞税や加算税といった罰則の対象となります。
また、基本的な会計の知識があれば、経営状況をしっかりと把握でき、経営方針を適切に判断することが可能です。会計の知識がないと、事業の雲行きが怪しくても状況を理解できず、気づいたときには手遅れといった事態も起こり得ます。
会計ソフトを導入すれば、専門知識がなくても会計業務に対応でき、作業時間も短縮できるため、積極的に検討しましょう。
ネット起業でよくある落とし穴と回避策
ネット起業には、以下のような落とし穴があります。以下では、それぞれを回避する方法を解説します。
- 「簡単に稼げる」情報に惑わされる
- 情報収集だけで行動に移せない
「簡単に稼げる」情報に惑わされる
SNSアカウントの運用時や、セミナーなどのイベントへの参加時に「簡単に稼げる」という情報を耳にすることがあるかもしれません。
しかし、基本的に簡単に稼げるネットビジネスはないと考えましょう。簡単に稼げると発信している人は、以下のいずれかに該当する可能性があります。
- ポジショントーク
- 高額な情報商材の販売が目的
- 高額なサポート契約の締結が目的
- ネットワークビジネスの勧誘
- 投資詐欺や犯罪への勧誘
これらの情報に騙されないためには、情報を鵜呑みにせず、自分で裏取りを行うことが大切です。利益が出る仕組みや作業内容を判断できない場合は、契約を避けるべきでしょう。どうしても自分では判断できない場合は、信頼できる知人や消費生活センターへの相談も検討しましょう。
情報収集だけで行動に移せない
情報収集に時間をかけすぎて、実際に行動に移せない人が多く存在します。「失敗したくない」という気持ちが強く、完璧を目指してしまうことが主な原因です。
しかし、情報収集に力を入れすぎて行動に移せなければ本末転倒です。もちろん、ビジネスで必要な基礎知識は重要ですが、基本的には「実際に行動しながら学ぶ」という姿勢を意識しましょう。
実際の行動のなかで知識やスキルを習得することで、本当に自分のビジネスに必要なことだけを学べます。事業のなかで知識を学ぶことで、実践的なイメージとともに効率良くスキルとして蓄積されるでしょう。
もちろん、積極的に行動することで失敗してしまう可能性はありますが、念入りに情報収集すれば失敗がなくなるともいえません。失敗を重ねながら学ぶことで、効率良く成長でき、短期間での収益化も見込めるでしょう。
まとめ
ネット起業は低コスト・低リスクで始められ、自由な働き方を実現できる魅力的な事業プランです。リスクを抑えて起業したい方や副業に挑戦したい方、柔軟な働き方を実現したい方など幅広い方におすすめです。
ただし、最低限のITリテラシーやマーケティング、会計・税務の知識は必要であり、情報を吟味する意識も求められます。情報収集は必要最低限に留め、積極的に行動しながら知識やスキルを習得することで、効率的に収益を得られるでしょう。
一言でネット起業といっても、ビジネスモデルは多岐にわたります。自分の専門性や興味関心、世間のニーズを踏まえ、まずは事業計画書の作成から始めてみましょう。
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