効率的にビジネスを展開するためには、賃貸オフィスだけでなく各種オフィスサービスの活用を検討すべきです。代表的なオフィスサービスは以下の3つです。
- バーチャルオフィス
- レンタルオフィス
- シェアオフィス
各オフィスサービスでサービス内容やメリット・デメリットが大きく異なります。最適なオフィスサービスを選択することで、オフィスコストの削減や業務効率の向上などが期待できます。それぞれの特徴を適切に理解し、「自分にはどのオフィスサービスが向いているか」を判断しましょう。
本記事では、バーチャルオフィスとレンタルオフィス、シェアオフィスの違いや向いている人の特徴を解説します。
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バーチャルオフィス・レンタルオフィス・シェアオフィスとは?
まずは代表的なオフィスサービスの定義や基本のサービス内容を確認しましょう。ここでは、バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスの定義や概要を解説します。
バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、事業所の所在地として公開できる住所をレンタルできるサービスです。契約者はバーチャルオフィスの住所を名刺やホームページへの記載、さらには法人登記の本店所在地として利用できます。
レンタルオフィスやシェアオフィスの大きな違いは、物理的なオフィススペースを持たないことです。その分、月額数百円から数千円の低価格で利用できます。
その特性から、自宅などに別途物理的な執務スペースを持ち、信頼性の高い住所を格安で利用したい方などに適しています。
レンタルオフィスとは
レンタルオフィスとは、専用の個室空間を契約し、オフィススペースとして利用できるサービスです。個室内には、机や椅子、通信環境といった設備が備えつけられており、基本的に住所利用も認められます。また、個室は施錠によって物理的なセキュリティ対策が可能であり、郵便物は専用の郵便受けに投函されるのが一般的です。
ただし、占有できるのはあくまで契約した個室空間のみです。エントランス・トイレなどの空間や、通信環境といった事業用の設備は他の利用者と共有します。
バーチャルオフィスとは異なり、実際に事業を進める物理的なオフィス空間を利用したい方に適したサービスです。
シェアオフィスとは
シェアオフィスとは、複数の事業者がひとつのオフィス空間を共有して利用するサービスです。レンタルオフィスのように占有できる個室は与えられず、広々としたひとつの空間をフリーアドレス制で利用するのが一般的です。
専用の個室空間が与えられない分、通常レンタルオフィスよりも安価に設定されています。机や椅子、通信環境などは、シェアオフィス事業者によってあらかじめ整備されており、すぐに事業を開始することが可能です。
また、利用者同士が交流できるイベントを開催しているシェアオフィス事業者が存在します。ビジネスの拠点としてだけでなく、人脈形成や情報交換の場としても活用されます。
バーチャルオフィス・レンタルオフィス・シェアオフィスの違い
ここでは、バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスの違いを、以下の4つの視点から解説します。
- 提供されるサービス内容の違い
- 利用目的や用途の違い
- コスト(料金)の違い
- 利用スタイル・柔軟性の違い
提供されるサービス内容の違い
バーチャルオフィス | レンタルオフィス | シェアオフィス | |
住所利用 | 基本的に可能 | ||
オフィススペース | なし | 専用の個室 | 共有のオフィススペース |
郵便物の取り扱い | ・受取/転送 ・窓口受取 | ・受取/転送 ・専用の郵便受け | ・受取/転送 ・窓口受取 |
貸会議室 | 提供されていることが多い | ||
電話サービス | ・電話転送 ・電話番号の貸出 | ||
窓口対応 | 事業者によって異なる |
バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスのサービス内容の一般的な傾向は、おおむね上記のとおりです。ただし、上記はあくまで傾向であり、詳細なサービス内容はオフィス事業者によって大きく異なります。
バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスの最大の違いは、利用できるオフィススペースの形態です。オフィスサービスを選ぶ場合、まずは必要なオフィススペースを判断基準とすることが重要です。
一方で、貸会議室や電話サービス、郵便物の転送、窓口受付などは事業者単位で異なります。オフィス形態別にサービスの有無を断言するのは簡単ではありません。
ただし、郵便物の転送についてはバーチャルオフィスが最も提供率が高く、レンタルオフィスが最も低い傾向があります。その代わり、レンタルオフィスでは専用の郵便受けが提供されているケースが多くあります。
利用目的や用途の違い
バーチャルオフィス | レンタルオフィス | シェアオフィス | |
主な利用目的・用途 | ・法人登記 ・名刺/ホームページへの住所公開 ・会議/打ち合わせ ・電話サービスの活用 | ・法人登記 ・名刺/ホームページへの住所公開 ・会議/打ち合わせ ・日常業務拠点 ・柔軟な業務環境の整備 ・許認可の取得 | ・法人登記 ・名刺/ホームページへの住所公開 ・会議/打ち合わせ ・柔軟な業務環境の整備 ・日常業務拠点 ・事業の共同経営 ・人脈形成 ・情報交換 |
バーチャルオフィスは住所を貸し出すサービスという特性上、代表的な用途は法人登記や名刺・ホームページの作成時の住所利用です。また、会議や打ち合わせが必要な事業者が会議室を借りる目的で契約する例もあります。
レンタルオフィスは専用の個室空間が提供されることから、法人登記や住所利用の他に、日常業務拠点としても利用されます。さらに、物理的なオフィス要件が定められている許認可(古物商許可/一般労働者派遣事業許可など)を取得できる点も特徴です。賃貸オフィスよりもコストを抑えつつ、必要な許認可を取得する目的で活用されるケースも多々あります。加えて、企業が柔軟に働ける環境(テレワーク/短期プロジェクトでの利用など)を整備する目的での利用も一般的です。
シェアオフィスはレンタルオフィスよりも安価であるため、コストを抑えて日常業務を行いたい個人事業主や小規模事業者に人気です。また、複数人で利用できることから、共同で事業を立ち上げる事業者にも活用されます。さらに、利用者同士で交流できるイベントが開催されることがあり、人脈形成や情報交換の場として役立てる方も存在します。
コスト(料金)の違い
バーチャルオフィス | レンタルオフィス | シェアオフィス | |
月額料金の目安 | 月額数百円~数千円程度 | 月額数万円~数十万円程度 ※シェアオフィスより高額 | 月額数万円~数十万円程度 ※レンタルオフィスより低額 |
バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスの月額料金は、基本的に「基本料金+オプション費用」で決まります。基本料金は、バーチャルオフィスが最も安価であり、レンタルオフィスが最も高額となるのが一般的です。
ただし、基本料金に含まれるサービス内容やオプション料金は、各事業者によって異なります。基本料金に含まれないサービスが多い場合、追加のオプションが増え、最終的な料金が高額になる可能性があります。
各オフィス形態やオフィス事業者を比較する際は、基本料金の金額や含まれるサービス内容、オプション料金を総合的に考慮しましょう。
利用スタイル・柔軟性の違い
バーチャルオフィス | レンタルオフィス | シェアオフィス | |
最低契約期間 | 1ヶ月~1年間が一般的 | ||
更新条件 | 自動更新が一般的 | ||
解約条件 | 1~3ヶ月前の通知が一般的 | ||
オフィス空間の柔軟性 | – | オフィススペースの空き状況によっては、スムーズに移転が可能 | オフィススペースの拡張や縮小には対応していない |
利用頻度 | 郵便物の受け取りや会議室の利用などの一時利用が中心 | 日常業務の拠点として常時利用するケースが多い | フリーアドレス制で都度払いのオフィスもあり、柔軟に利用しやすい |
サービスの最低契約期間や更新・解約条件は、オフィス形態というよりは、事業者ごとに取り扱いが異なります。
バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスの最低契約期間は1ヶ月〜1年間程度が一般的です。一方、賃貸オフィスは2年契約が中心です。バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスのほうが事業の方向性の変化に柔軟に対応しやすいといえます。
ただし、具体的な最低契約期間は各オフィス事業者によって異なります。短期利用を希望する場合や、事業の方向性の変化に柔軟に対応したい場合には、短期契約に対応しているサービスを選択しましょう。
また、解約条件は1〜3ヶ月前の通知が必要で、通知がない場合は自動更新となるケースが一般的です。後々のトラブルを避けるためにも、契約前に更新条件や解約条件を確認しましょう。
加えて、事業の変化に合わせて柔軟にオフィススペースを拡張・縮小したい場合は、レンタルオフィスが有力です。レンタルオフィスであれば、他の個室空間が空いていれば柔軟に移転でき、オフィスを拡張・縮小しやすい傾向があります。
バーチャルオフィスが向いている人・企業
3つのオフィスサービスを比較した際、バーチャルオフィスの最大の特徴は、格安で事業用の住所を利用できる点です。この特徴から、以下のような人・企業はバーチャルオフィスが向いているといえるでしょう。
- コストを抑えて事業用の住所を利用したいスタートアップ・個人事業主
- リモートワークが中心で物理的なオフィスが不要な企業
- 手軽に東京・地方進出を目指す事業者
前提として、バーチャルオフィスを活用する際は、自宅などに別途業務を進められる物理的なオフィス空間が必要となります。
レンタルオフィスが向いている人・企業
レンタルオフィスを他のオフィスサービスと比べた際の最大の特徴は、占有できる個室を利用できる点です。特に、以下のような人・企業はレンタルオフィスの活用が適しています。
- 短期プロジェクトで新たにオフィス空間が必要となる企業
- 新規の拠点開設を検討する企業
- 個室環境を重視するフリーランス・ベンチャー企業
- 物理的な事業所が求められる許認可を取得する事業者
3つのオフィスサービスのなかで、最も賃貸オフィスに近い執務空間を利用可能です。物理的な事務所が求められる古物商許可や一般労働者派遣事業許可といった許認可も取得できる傾向があります。
シェアオフィスが向いている人・企業
他の事業者とひとつのオフィススペースを共有して利用するシェアオフィスは、以下のような人・企業に向いています。
- 交流やネットワーキングを重視する事業者・ビジネスパーソン
- 柔軟にオフィスを使いたいフリーランス・中小企業
- コストを抑えて執務拠点を確保したい事業者
- 複数人で事業を立ち上げる起業家
特に、人脈形成やネットワーキングが目的の場合、利用者同士で交流できるイベントを開催しているシェアオフィス事業者がおすすめです。
違いを理解して自社に合ったオフィスを選ぼう
自分に最適なサービスを選ぶためには、それぞれの違いを整理して、ニーズに合致するオフィス形態を選択することが重要です。特に、以下の要素を明確にすることで、自社に合ったサービスを選ぶ際の基準となります。
- 予算
- 用途
- 必要サービス
- 利用頻度
また、同じオフィス形態であっても、事業者によって料金やサービス内容は大きく異なります。自分に合ったオフィス形態を判断したら、次は同一のオフィス形態同士を比較・検討しましょう。
まとめ
バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィスには、オフィススペースやサービス内容、料金相場など、複数の違いが存在します。特に利用できるオフィススペースや個室空間の有無が最大の違いです。
それぞれ向いている人や企業の特徴が異なるため、違いを整理し、目的に合致したサービスを選択しましょう。各種オフィスサービスを有効活用すれば、賃貸オフィスと比べてコスト削減や事業効率の向上を期待できるため、ぜひ参考にしてください。
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